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離婚率52.9%、都道府県トップは青森県——結婚相談所も婚活サービスも教えてくれない「離婚の本当のリスク」

離婚率52.9%、都道府県トップは青森県——結婚相談所も婚活サービスも教えてくれない「離婚の本当のリスク」

結婚相談所は、「高い成婚率」を見せてくる。

だが、その数字は、その相談所に入れば結婚できる確率をそのまま示したものではない。

そして、たとえ成婚したとしても、その結婚が破綻したときに男性が何を失う可能性があるのかは、ほとんど教えてくれない。

家を失う。築いてきた資産を分ける。子どもと毎日会えなくなる。離婚が成立するまで婚姻費用を払い、成立した後も養育費を払い続ける。それでも周囲からは「父親なのだから責任を取れ」と言われる。

結婚するとき、男には経済力と覚悟を求められる。だが、その結婚が壊れたとき、男の生活がどこまで崩れるのかについて、婚活サービスはほとんど説明しない。

広告や関連メディアには、「高い成婚率」「相談所婚の離婚率は約10%」「幸せな結婚をサポート」といった、耳当たりのよい言葉が並ぶ。

その結婚が破綻したときに男性が何を失う可能性があるのかは、ほとんど教えてくれない

さらに、ここでもう一つ確認しておきたい。

「結婚相談所経由の夫婦は離婚率10%未満」という数字を裏付ける、国や地方自治体の公的統計は公表されていない。

厚生労働省は日本全体の婚姻件数・離婚件数・婚姻期間などを集計しているが、結婚相談所や婚活サービス経由で結婚した夫婦だけを区分して追跡し、一般の夫婦と比較条件をそろえた公的統計は、少なくとも公表されていない。つまり「相談所婚なら離婚率10%未満」という数字は、国が確認した安全性の保証ではなく、多くは婚活事業者や関連事業者が独自に示している数字である。

そして、婚活サービスが本当に見せていないのは「離婚率という数字」そのものではない。離婚した後、多くの場合男性側が何を失うのかという「その先の現実」だ。


「相談所婚の離婚率は約10%」は、何を数えた数字なのか

では、婚活業界でよく見かける「相談所婚の離婚率は約10%」という数字は、実際にはどのように算出されているのか。国が定めた統一的な算出基準はなく、事業者によって調査対象や追跡方法が異なりうる。本来確認すべきなのは、次のような点である。

  • 何組を対象に調査したのか
  • 成婚後、何年間追跡したのか
  • 調査への回答率はどの程度だったのか
  • 連絡が取れなかった元会員をどう扱っているのか
  • 離婚した元会員まで把握できているのか

これらの条件が公開されていなければ、「10%」が成婚から1年後の状況を指すのか、10年後まで含む数字なのかすら判断できない。

婚活サービスは「入り口」を全力で売り込む。だが「出口」――つまり離婚に至った場合、そこで男性に何が起きるのかについては、一般的な広告ではほとんど語られない。


日本の離婚の実態:2024年、離婚は婚姻の38.3%

まず全体像を押さえておこう。厚生労働省の令和6年(2024年)人口動態統計(確定数)によれば、2024年の婚姻件数は48万5,092組、離婚件数は18万5,904組。年間の離婚件数を同年の婚姻件数で割った「離婚・婚姻比」は38.3%になる。

日本の離婚の実態

2024年には、同居期間5年未満の離婚が相当数を占める一方、同居20年以上を経た離婚も少なくない。結婚直後だけでなく、長い婚姻生活を経た後にも破綻するリスクは残るということだ。

「結婚さえ成立すれば、その後も安定して続く」という前提は、こうした離婚件数の実態を見る限り、無条件には置けない。

そしてここからが本題だ。特に、夫が主たる稼得者で、妻が主たる監護者だった家庭では、離婚後の金銭負担と子どもとの別居リスクが男性側に同時に集中しやすい。


青森県では、婚姻100件に対して離婚53件

都道府県別に見ると、地域差はさらに際立つ。厚生労働省の令和6年(2024年)人口動態統計(確定数)をもとに【離婚件数÷婚姻件数】で算出した。

全国47都道府県 離婚・婚姻比一覧(2024年確定数)

全国47都道府県 離婚・婚姻比一覧(2024年確定数)

全国平均は38.3%。1位の青森県は、年間の離婚件数が同年の婚姻件数の52.9%に達している。青森県の場合、2024年の婚姻件数3,313組に対して離婚件数は1,752組。婚姻件数そのものが全国的に少ない県のため、過去に成立した婚姻から生じる年間の離婚が、新しく生まれる結婚の数の半分を超える結果になっている。

一方、最も低いのは東京都で26.7%。離婚件数そのものは全国最多の20,424組だが、婚姻件数も76,441組と突出して多いため、比率としては全国最下位になる。「新しく生まれる結婚の数に対して、終わる結婚の数がどれだけ多いか」を示すこの指標では、婚姻市場が縮小している地方ほど数字が跳ね上がりやすい構造がある。

低賃金や生活費の負担が離婚・婚姻比を押し上げているという単純な因果は、出典をもって示せない。むしろ重要なのは、この比率は離婚件数だけでなく、その地域の婚姻件数が減少することでも上昇するという点だ。したがって、地域ごとの夫婦関係の壊れやすさだけを示す数字ではなく、人口減少や婚姻市場の縮小も反映している。それでも「結婚相談所の成婚率」だけを見て安心するのではなく、こうした構造的な数字も知っておいて損はない。


現実①:未成年の子がいる離婚では、母親がすべての子の親権者となるケースが約85%

子どもがいる夫婦が離婚するとき、親権を持つのはどちらか。

離婚の親権者の割合

2024年までの単独親権制度下では、未成年の子がいる離婚の多くで母親が親権者となってきた。厚生労働省の調査では、未成年の子がいる離婚のうち、母親がすべての子の親権者となったケースは約85%を占め、父親がすべての子の親権者となったケースは1割程度にとどまる。これは2024年までの単独親権制度下での実績であり、2026年4月に施行された共同親権制度下の結果を示すものではない。ただし、共同親権になることと、子どもと同居して日常的に監護できることは別の問題である。

親権者や監護者の判断では、それまで誰が中心となって子どもの日常的な世話を担ってきたかという「監護の継続性」が重視される傾向がある。家庭内で母親が主たる監護者だった場合、その実績が結果的に母親側へ有利に働きやすい構造になっている。

従前の主たる監護者が母親だった家庭では、父親が離婚後も子どもとの日常生活を維持するハードルは高い。この数字は、父親の愛情が弱いことを意味しない。家族を養うために仕事を中心に担ってきた父親ほど、日常的な監護実績では不利になり、離婚後に子どもとの生活を維持しにくくなる構造がある。

2026年4月からは改正民法により離婚後の「共同親権」制度が施行された。父母は協議や調停によって、共同親権か単独親権かを決めることができる。合意できない場合には、裁判所が父母と子の関係などを考慮して判断する。ただし、共同親権になったからといって、父親と子どもが過ごす時間が自動的に増えるわけではない。親権者であることと、子どもと同居して日常的に監護することは別の問題であり、制度が変わっても父親が子どもとの日常生活を当然に取り戻せるわけではない。

現実②:親子交流の取り決めがあっても、会えるとは限らない

親子交流は、離婚後も子どもが別居親との関係を維持するための制度であり、子の利益を最優先に定められる。しかし、取り決めがあっても、実際の実施には同居親の協力が必要となる場面が多い。

父母間の対立や、子どもの意向をめぐる認識の相違などから実施が途絶え、再開まで調停等を要することもある。親子交流について、執行官が子どもを強制的に連れ出して交流させるような直接強制は認められていない。

親子交流は子の利益のための制度であるはずが、実務上は同居親(多くの場合は母親)の協力姿勢に大きく左右される――これが、離婚後に子どもとの関係を維持しようとする父親たちが直面する現実だ。

現実③:財産分与・婚姻費用・養育費、そして強制徴収という「出口のない支払い」

離婚には当然、お金の問題がついてまわる。財産分与、婚姻費用、養育費——それぞれの制度と、近年強化されている「強制徴収」の仕組みを見ていく。

財産分与:特有財産も「証明できなければ守れない」

財産分与

婚姻中に夫婦の協力によって形成した共有財産は、原則として2分の1を基準に清算される。夫の収入が妻を大きく上回っていても、稼いだ名義が夫であることだけでは、夫の財産として守られない。夫婦の一方が特別な資格・能力によって突出した高収入を得ている場合など、例外的に6:4や7:3に修正される判例もあるが、それはあくまで例外だ。

一方、結婚前から保有していた預貯金や有価証券、婚姻中に相続・贈与によって個人で取得した財産は「特有財産」とされ、原則として財産分与の対象外になる。

ただし、ここで安心するのは早い。民法762条2項では、夫婦のどちらに属するか明らかでない財産は共有財産と推定される。つまり、「これは結婚前から持っていた自分の財産だ」と主張するだけでは足りず、争いになれば、特有財産であると主張する側が、通帳・取引履歴・残高証明・相続関係書類などによって取得時期や資金の出所を立証しなければならない。

しかも、婚前から使っていた口座に婚姻後の給与を振り込み、生活費や住宅費を出し入れしていた場合、婚前財産と共有財産の区別は急速に難しくなる。結婚時に1,000万円を持っていたとしても、その後何年もの間、同じ口座で給与と生活費を管理していれば、離婚時に残っている1,000万円が婚前財産そのものなのか、婚姻中の収入によって形成された財産なのかを証明する必要が生じる。元の財産が生活費などに使われ、現在の残高との連続性を追跡できなければ、特有財産として全額が除外されない可能性もある。住宅の頭金に婚前資金を投入した場合も同様で、頭金の出所を証明できても、婚姻中に夫婦の収入でローンを返済していれば、住宅全体がそのまま個人財産として守られるわけではない。

つまり、特有財産は法律上は対象外でも、実務上は、取得原因や資金の流れを証明し、共有財産と区別できる範囲でなければ、特有財産として除外してもらうことが難しくなる。長い婚姻生活の中で資金が混ざるほど、独身時代に築いた資産であっても、離婚時に自分の財産として取り戻すハードルは上がっていく。

また、退職金については、支給の確実性や退職時期などを踏まえて財産分与の対象となるかが判断される。企業型確定拠出年金やiDeCoについても、婚姻期間中に形成された部分の評価が問題となることがあるが、制度上そのまま口座資産を半分移転できるわけではなく、個別に判断される。

婚姻費用:離婚が成立する前から、収入の多い側が払い続ける

婚姻費用

「婚姻費用」とは、離婚が成立するまでの別居期間中、夫婦や子の生活を維持するための生活費のことだ。別居後も婚姻関係が続く限り、収入の多い側には相手や子どもの生活費を分担する義務がある。実務上は、婚姻費用を請求した時点や調停を申し立てた時点以降の支払いが問題となることが多い。

家庭裁判所が公表する「婚姻費用算定表」に基づき、夫婦双方の収入と子どもの人数・年齢から金額が決まる。基本的に収入の多い側が少ない側へ支払う仕組みであり、共働きでも収入差があれば発生する。

離婚交渉が長引けば長引くほど、この婚姻費用の支払いも長期化する。離婚手続が長期化するほど、収入の多い側の負担も積み上がっていく構造になっている。

養育費:取り決めをしても、長期間払い続ける

養育費

厚生労働省の調査では、母子世帯のうち養育費を「現在も受けている」と回答したのは約28%にとどまる。これは養育費の取り決めと履行が十分に機能していない現実を示している。一方で、支払い義務が定められた父親にとっては、子どもが一定年齢に達するまで長期間の負担が続くことになる。

さらに2026年4月施行の改正民法では、「法定養育費」制度が新設された。離婚時に養育費の取り決めがなくても、子を主に監護する親は、子ども1人につき月額2万円の法定養育費を請求できる。これは暫定的な金額であり、父母の協議や家庭裁判所の手続によって、実際の収入や事情に応じた金額を別途定めることができる。ただし「請求できる」ことと「自動的に口座から徴収される」ことは別であり、支払いを実現するには請求・履行の手続きが必要になる。

強制徴収:未払いに対する回収制度は強化されている

養育費・婚姻費用の未払いに対する強制執行(差し押さえ)の制度は、近年急速に強化されている。

強制徴収

  • 2020年4月施行の改正民事執行法により「第三者からの情報取得手続」が新設された。転職して勤務先が分からなくなっても、市区町村や日本年金機構に照会することで勤務先を特定し、給与を差し押さえられるようになった。財産開示手続への不出頭や虚偽の陳述には刑事罰も科される。
  • 給与差し押さえの上限が緩和されている。通常の金銭債権では給与(手取り)の4分の1が差押えの上限(手取りが44万円を超える場合は33万円を除いた額)となるのに対し、養育費や婚姻費用では手取りの2分の1まで差押えの対象となり得る(手取りが66万円を超える場合は33万円を除いた額)。裁判所の公式説明によれば、養育費等の債権者は一般の債権者より差押えの範囲が広く設定されている。
  • 給与だけでなく、未払い額や執行費用の範囲で預貯金なども差押えの対象となり得る。
  • 2026年4月施行の改正民法では、父母間の合意書などで定めた養育費について、先取特権に基づいて優先的に回収できる範囲が、子ども1人につき月額8万円を上限として認められる。あくまで、合意書などを根拠に先取特権を行使して差押えを申し立てる場合の対象範囲の上限であり、養育費自体の上限ではない。

かつては「相手が逃げれば養育費は回収できない」というケースも少なくなかったが、制度はこの数年で、養育費を「取り決めだけで終わらせず、実際に回収する」方向へ明確に強化されている。婚姻中に形成した共有財産を原則2分の1で清算し、離婚成立までは婚姻費用を負担し、離婚後も養育費を長期間支払う。さらに滞納すれば、給与の2分の1まで差押えの対象となり得る——これが、離婚に伴って多くの男性が直面する経済的な現実だ。

現実④:熟年離婚という時限爆弾

同居20年以上での離婚、いわゆる熟年離婚も少なくない。この場合、財産分与に加えて厚生年金の分割(年金分割制度)も絡んでくる。長年勤め上げてきた厚生年金の記録を分割されることで、老後の生活設計そのものが大きく狂うケースもある。若いころの離婚とは種類の違う、老後の生活基盤に直結するリスクだ。


それでも婚活サービスはこう言わない

婚活サービスのビジネスモデルは「成婚させること」がゴールであり、そこから先――結婚生活の継続や、万が一破綻した場合に何が起きるか――は基本的にサービスの範囲外だ。営利事業である以上、それは当然の話でもある。しかし利用者側からすれば、「結婚のリスク」の半分しか見せられていないという状態になっている。

  • 「離婚率10%」という数字は、分母・分子・追跡期間が十分に公開されていないケースが多い
  • 離婚後に何が起きるか(親権・面会交流・財産分与・養育費)は、そもそも婚活サービスの説明対象にすら含まれていない
  • 結果として、男性は成婚までのメリットを強く提示される一方、主たる稼得者や別居親になった場合に負う制度上のリスクを、十分に知らないまま婚姻を決断する可能性がある

結婚相談所にとっての成功は、成婚退会である。だが男性にとっての成功は、結婚後も人生を壊さずに守れることだ。

まとめ:知った上で選ぶために

結婚そのものを否定したいわけではない。ただ、リスクを正しく知ったうえで意思決定をすることと、知らされないまま関係を進めることの間には、天と地ほどの差がある。

親権の帰属、面会交流の実効性、財産分与や養育費の負担構造――これらは個々の相手の人柄とは関係のない、日本の司法・行政制度そのものに組み込まれた構造的な傾向だ。だからこそ、婚活を始める前、あるいは結婚を決める前に、この現実を知っておくことには意味がある。

婚活サービスが売っているのは「出会いのきっかけ」であり、「結婚後の人生設計」ではない。その先は、自分自身で情報を持ち、備えるしかない。


参考資料

  • 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」
  • 政府統計の総合窓口(e-Stat)「人口動態調査 人口動態統計 確定数 婚姻上巻9-1/離婚上巻10-1」都道府県別婚姻件数・離婚件数(2024年)
  • 最高裁判所「令和6年度司法統計年報 3 家事編」
  • 厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」
  • 民法762条(夫婦間における財産の帰属・共有推定)/法務省「財産分与」
  • 民事執行法(2020年4月施行改正、第三者からの情報取得手続・財産開示手続)/民事執行法152条(給与差押えの範囲)
  • 裁判所「養育費に基づく差押え」
  • 民法766条の3、308条の2(2026年4月施行改正、法定養育費・先取特権)
  • 法務省「父母の離婚後の子の養育に関するルール」(改正民法・共同親権制度)

なぜ、男に生まれただけで応募できないのか

なぜ、男に生まれただけで応募できないのか

深夜のコンビニのバイトを上がって、家に帰る。

眠い。手も足も冷えている。それでも机に向かって、参考書を開く。親に負担をかけたくないから、塾には行っていない。志望校の判定はまだ届かない。それでも、あと一年、ここで踏ん張れば――そう自分に言い聞かせて、ページをめくる。

こういう男子が、日本のどこかに必ずいる。

彼が、志望校の募集要項を開く。

そして、あるページで手が止まる。

自分には、応募できない枠がある。

学力が足りないからじゃない。努力が足りないからでもない。家庭が裕福だからでもない。

ただ、男に生まれた。それだけの理由で、その扉は最初から閉まっている。

ただ、男に生まれた。それだけの理由で、その扉は最初から閉まっている。



1.女子には二つの入口。男子には一つしかない


女子受験生には、男女共通の選抜に加えて、女子だけが応募できる選抜がある。

男子受験生には、その選択肢がない。

どれだけ困っていても、どれだけ努力していても、性別を見た時点で入口から外される側がいる。

数字で見ても、これはもう「一部の難関理系大学だけの話」ではない。2025年度入試では、女子枠・女性枠を導入した大学が国公立30校、私立36校に広がった。2026年度の国公立大学入試では、理工系女子を対象とする選抜を実施する大学が38大学49学部に達している。国立大学の理工系女子枠の募集人員は、2026年入試で736人に達した。前年から184人増え、3年前の38人と比べると約19倍である。東京科学大学では、2026年度の女子枠募集人員が合計154人にまで拡大した。

女子枠・女性枠を導入した大学が国公立30校、私立36校に広がった

女子は、男女共通の選抜に加えて女子枠も選択肢にできる。男子は、その選択肢を最初から与えられない。

男子受験生が感じる苦しさは、単に「女子が優遇されていて悔しい」という話ではない。

自分も同じ大学を目指している。自分も同じように努力している。自分も将来に不安を抱えている。それなのに、自分だけは最初から応募資格がない。

まだ答案の一枚も書いていない。まだ一問も採点されていない。それなのに、性別の欄を見られた時点で、勝負の外に置かれる。

彼が欲しいのは、特別扱いではない。ただ、自分も同じ場所で挑戦する機会だ。

努力が評価される前に、扉が閉まる。それがどういう気持ちか、閉められた側にしか分からない。

努力が評価される前に、扉が閉まる。その気持ちは、閉められた側にしか分からない。

 

 

2. 困っている男子でも、男というだけで奨学金が受け取れない


性別による違いは、大学入試だけでは終わらない。

石川県では、公益財団法人ほくりくみらい基金が、理工系・工業高校・高専などを志望する女子生徒を対象に、「Masako基金 STEAM Girlsプログラム」を2026年5月に立ち上げた。返済不要の給付額は一人10万円で、年間30人規模への給付が予定されている。

女子生徒対象の公益財団法人ほくりくみらい基金

だが、ここでも男子生徒は最初から応募できない。

考えてみてほしい。

父を早くに亡くして、母の稼ぎだけで暮らしてきた男子がいるとする。弟や妹の学費のことも頭にある。それでも理系に進みたくて、必死に勉強してきた。

家は苦しい。理工系に行きたい。将来のために努力している。

女子であれば、この基金に応募できる。彼は、できない。

条件が足りないからではない。困窮の度合いが軽いからでもない。ただ、男だからだ。支援を必要とする理由より先に、性別が見られる。

同じように理工系を目指し、同じように経済的不安を抱えていても、女子なら応募できる制度に、男子の自分は応募できない。

「男は、自分で何とかしろということなのか」

そう感じるのは、被害妄想でも僻みでもない。制度の設計そのものが、実際にそうなっている。

制度を作る側に、冷たい意図はないのかもしれない。それでも、外された側に届いてしまうメッセージがある。

お前の困難は、わざわざ手を差し伸べるほどのものじゃない。お前は男なんだから、自分で何とかしろ。

そんなつもりはない、と作った側は言うだろう。だが、閉め出された17歳には、そうとしか聞こえない。

お前は男なんだから、自分で何とかしろ。と作った側は言うだろう。

 

 

3. 進学だけでは終わらない。男性には年齢の壁まで付く


苦しいのは、こうした性別による条件が、大学進学だけで終わらないことだ。

東京都は「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」で、都内商店街での開業を対象に最大844万円を助成している。対象は女性、または39歳以下の男性。

東京都「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」

女性には、この制度上の年齢制限がない。ほかの要件を満たせば、40歳の女性は応募できる。一方、40歳の男性は年齢要件の時点で、この枠の対象外になる。

岩手県の「いわて希望応援ファンド」でも、通常の助成率は経費の2分の1以内だが、代表者が女性、または39歳以下の若者であれば3分の2以内に引き上げられる。ここでも、女性は年齢を問われず、男性は若くなければ優遇されない。

ここでも、女性は年齢を問われず、男性は若くなければ優遇されない。

想像してみてほしい。

40歳の男が、もう一度立ち上がろうとしている。一度事業に失敗したのかもしれない。会社を追われたのかもしれない。それでも、家族のために、あるいは自分の人生をやり直すために、最後の資金をかき集めて店を開こうとしている。

その男が、要項の対象者欄を見る。「女性、または39歳以下の男性」。

彼は、女性なら年齢を問われず届いたはずの枠に、一歳の差で手が届かない。同じ40歳でも、性別が違えば結果が変わる。

「男は40を過ぎたら、もう応援する価値もないのか」

「女の再挑戦は後押しされて、男の再挑戦は自己責任なのか」

そう問いたくなったとして、それを誰が責められるだろう。

なお、東京都には性別や年齢を問わない別の開業支援制度もあり、40歳以上の男性がすべての支援から排除されているわけではない。ただし、そちらの助成上限は694万円である。女性または39歳以下の男性を対象とする制度は最大844万円であり、男性にだけ年齢条件が付く構造は残っている。

誰かが裏で示し合わせているわけではない。目的も、財源も、実施主体もバラバラだ。それでも、男の側から人生を眺めたとき、景色は不気味なほど一貫している。応募できない枠。あとから付く年齢の条件。それが進学から起業まで、人生の節目ごとにくり返し立ちはだかる。

「男は40を過ぎたら、もう応援する価値もないのか」

 

 

4. なぜ、男子の苦しさは「見えなくなる」のか


女子枠や女性限定支援には、分かりやすい理由が付けられている。

理工系に女性が少ない。管理職に女性が少ない。起業家に女性が少ない。だから女性を後押しする必要がある。

その説明自体は理解できる。

しかし、その議論では一人一人の男子が消えてしまう。

「男性はこれまで有利だった」「理工系は男性が多い」「社会の中心は男性だった」

こうした集団全体の話が、目の前の男子学生に重ねられる。

だが、今受験している17歳や18歳の男子が、過去の男性社会を作ったわけではない。彼らが管理職を独占したわけでも、女性の進学を妨げたわけでもない。

ただ、男性として生まれただけだ。

それでも、過去の男性が有利だったという理由で、現在の男子が支援対象から外される。困窮家庭の男子も、地方の男子も、「男性」という大きなくくりの中に押し込められる。

女性の少なさは社会問題として扱われる。一方で、苦しんでいる男子の存在は「男性は恵まれている」という言葉で消される。

困っているのに、困っていると認めてもらえない。

助けを求めても、「お前は有利な側だろう」と返される。

苦しいと口にすれば、被害者ぶるなと笑われる。不公平だと言えば、女性の足を引っ張る人間として扱われる。

だから、多くの男は何も言わなくなる。言ったところで、聞いてもらえないと分かっているからだ。

俺が我慢すればいい。俺が黙って、自分で何とかすればいい。――そうやって飲み込んだ声が、いったいどれだけあるだろう。誰にも数えられないまま、消えていく。

俺が我慢すればいい。俺が黙って、自分で何とかすればいい。――

 

 

5. 助けるときは対象外。評価するときは結果を出せ


男性は、結果を出すことを求められる。

学歴。収入。安定した職業。貯蓄。社会的地位。

結婚や婚活でも、男性はこれらを持っているかどうかで評価されやすい。収入が低ければ努力不足と言われ、仕事が不安定なら将来性がないと言われ、結婚できなければ魅力がないと言われる。

だが、その競争の入口では、男子だけが応募できない枠が存在する。男子だけが受け取れない奨学金がある。男性だけに年齢制限が付く起業支援がある。

助けるときは「男性だから対象外」。

評価するときは「男性なのだから結果を出せ」。

女性の少なさは、女子枠や女性限定支援を設ける理由として制度上扱われる。一方、同じ制度から外れる男子個人の困窮は、「男性全体は有利だ」という集団論の陰に隠れやすい。

なぜ男性だけは、いつも自分で立ち上がらなければならないのか。

なぜ男性の痛みだけは、社会問題ではなく個人の弱さにされるのか。

なぜ男性の痛みだけは、社会問題ではなく個人の弱さにされるのか。

 

 

6. 制度を推進する側は、何を根拠にしているのか


男子側の不利益を検討するには、制度を導入する側の根拠も確認する必要がある。

推進派の立場はこうだ。理工系分野の男女比は国際的に見ても極端に偏っており、この偏りを放置すること自体が別の形の不平等だ。女子枠は多くの大学で一般選抜と選抜区分を分け、学力試験も課しており、能力担保との両立を図っている。京都大学新聞の取材に対し、文科省高等教育局の担当者は、男性比率が極めて高い分野でさらに男性を対象とする措置を追加する合理性は乏しい、という趣旨の説明をしている。

しかし、ある分野で男性全体の比率が高いことは、目の前の困窮した男子に支援が不要であることを意味しない。集団の人数と、一人一人が置かれた生活状況は、本来別の問題である。学部全体では男性が多くても、その一人一人が経済的、社会的に恵まれているわけではない。

このロジックをどう評価するかは、人によって分かれるところだろう。少なくとも、女子枠は公表された制度として運用されており、2018年に発覚した医学部入試の女子減点問題のような「秘密裏の操作」とは性質が違う。

ただし、公表されていることと、公平であることは同じではない。「男性は応募できません」と要項に書いてあれば、不利益がなくなるわけでもない。

目の前の困窮した男子に支援が不要であることを意味しない。

 

 

7. 結婚防衛ラボとして、男子に伝えたいこと


男子学生には、厳しい現実を知っておいてほしい。

社会が必ず自分を公平に扱ってくれるとは限らない。努力すれば、必ず同じ機会が与えられるとも限らない。困っていれば、誰かが助けてくれるとも限らない。

男というだけで、支援する必要のない側に分類されることがある。それでも、男性には結果だけが求められる。収入を上げろ。安定した仕事に就け。貯金を作れ。結婚相手を安心させろ。

支援から外されても、結果だけは要求される。

進学、就職、収入、資産形成は、その後の結婚や家族形成で男性に求められる条件にも直結する。男性は支援から外されても、その後の就職、婚活、結婚では収入と安定を求められる。だから、進学や仕事の段階から生活基盤を守ることは、そのまま結婚に人生の安定を依存しないための防衛にもなる。

だからこそ、早い段階で現実を知る必要がある。

利用できない制度を知らないまま進路を決めない。自分が利用できる奨学金、選抜方式、地域支援を徹底的に調べる。資格を取る。収入源を増やす。若いうちから資産形成を始める。会社だけに依存しない。結婚だけに人生の安定を求めない。

制度の不公平を見抜く。同時に、不公平への怒りだけで人生を止めない。

男の苦しさは、放っておいても誰かが自動的に救ってくれるわけじゃない。悔しいが、それが今の現実だ。

だからこそ、自分を守る知識と、自分を支える資産を持つ。頼れる場所を、一つでも多く増やしておく。一度つまずいても、また立て直せる人生の作り方を、若いうちから身につけておく。

本当は、そんな備えをしなくても救われる社会であってほしい。困っていれば、性別に関係なく手が差し伸べられる社会であってほしい。

でも、まだそうなっていない。ならば、知らないまま丸腰で立たされることだけは、避けなければいけない。

守ってもらえないかもしれない。その前提の上で、それでも自分の人生を自分で設計していく。

それが、男子学生の段階から始まる、いちばん静かで、いちばん確実な結婚防衛だ。

自分を守る知識と、自分を支える資産を持つ。

 

参考ソース

  • 旺文社パスナビ「2026年入試女子枠拡大続く」

  • リセマム「【大学受験2026】女子枠の拡大続く…旺文社が実施状況&事例を公開」(国立大学理工系女子枠、2026年入試で736人・前年比184人増)

  • ReseEd「【大学受験2026】理工系「女子枠」京大や阪大など8大学増の38大学」

  • Yahoo!ニュース/All About「東京科学大学「女子枠」の不公平感をデータで検証」(2026年度女子枠定員154人)

  • 京都大学新聞社「【特集】「女子枠」制度を考える」(文科省担当者コメント)

  • 公益財団法人ほくりくみらい基金 プレスリリース「Masako基金 STEAM Girls プログラム」(2026年5月22日)

  • womantype「女性活躍推進助成金を分かりやすく解説」(東京都・若手女性リーダー応援プログラム助成事業)

  • 大槌町・九戸村ほか「いわて希望応援ファンド地域活性化支援事業」公募要領(岩手県、助成率1/2→若者・女性2/3)

  • 東京都・公益財団法人東京都中小企業振興公社「令和8年度 若手・女性リーダー応援プログラム助成事業/商店街起業・承継支援事業」募集案内(844万円枠と694万円枠の対象者比較)

※実施主体について:東京都の助成金は都、いわて希望応援ファンドは公益財団法人いわて産業振興センター、Masako基金は民間財団のほくりくみらい基金と、それぞれ別の主体が運営している。