
結婚相談所は、「高い成婚率」を見せてくる。
だが、その数字は、その相談所に入れば結婚できる確率をそのまま示したものではない。
そして、たとえ成婚したとしても、その結婚が破綻したときに男性が何を失う可能性があるのかは、ほとんど教えてくれない。
家を失う。築いてきた資産を分ける。子どもと毎日会えなくなる。離婚が成立するまで婚姻費用を払い、成立した後も養育費を払い続ける。それでも周囲からは「父親なのだから責任を取れ」と言われる。
結婚するとき、男には経済力と覚悟を求められる。だが、その結婚が壊れたとき、男の生活がどこまで崩れるのかについて、婚活サービスはほとんど説明しない。
広告や関連メディアには、「高い成婚率」「相談所婚の離婚率は約10%」「幸せな結婚をサポート」といった、耳当たりのよい言葉が並ぶ。
- 「相談所婚の離婚率は約10%」は、何を数えた数字なのか
- 日本の離婚の実態:2024年、離婚は婚姻の38.3%
- 青森県では、婚姻100件に対して離婚53件
- 現実①:未成年の子がいる離婚では、母親がすべての子の親権者となるケースが約85%
- 現実②:親子交流の取り決めがあっても、会えるとは限らない
- 現実③:財産分与・婚姻費用・養育費、そして強制徴収という「出口のない支払い」
- 現実④:熟年離婚という時限爆弾
- それでも婚活サービスはこう言わない
- まとめ:知った上で選ぶために

さらに、ここでもう一つ確認しておきたい。
「結婚相談所経由の夫婦は離婚率10%未満」という数字を裏付ける、国や地方自治体の公的統計は公表されていない。
厚生労働省は日本全体の婚姻件数・離婚件数・婚姻期間などを集計しているが、結婚相談所や婚活サービス経由で結婚した夫婦だけを区分して追跡し、一般の夫婦と比較条件をそろえた公的統計は、少なくとも公表されていない。つまり「相談所婚なら離婚率10%未満」という数字は、国が確認した安全性の保証ではなく、多くは婚活事業者や関連事業者が独自に示している数字である。
そして、婚活サービスが本当に見せていないのは「離婚率という数字」そのものではない。離婚した後、多くの場合男性側が何を失うのかという「その先の現実」だ。
「相談所婚の離婚率は約10%」は、何を数えた数字なのか

では、婚活業界でよく見かける「相談所婚の離婚率は約10%」という数字は、実際にはどのように算出されているのか。国が定めた統一的な算出基準はなく、事業者によって調査対象や追跡方法が異なりうる。本来確認すべきなのは、次のような点である。
- 何組を対象に調査したのか
- 成婚後、何年間追跡したのか
- 調査への回答率はどの程度だったのか
- 連絡が取れなかった元会員をどう扱っているのか
- 離婚した元会員まで把握できているのか
これらの条件が公開されていなければ、「10%」が成婚から1年後の状況を指すのか、10年後まで含む数字なのかすら判断できない。
婚活サービスは「入り口」を全力で売り込む。だが「出口」――つまり離婚に至った場合、そこで男性に何が起きるのかについては、一般的な広告ではほとんど語られない。
日本の離婚の実態:2024年、離婚は婚姻の38.3%
まず全体像を押さえておこう。厚生労働省の令和6年(2024年)人口動態統計(確定数)によれば、2024年の婚姻件数は48万5,092組、離婚件数は18万5,904組。年間の離婚件数を同年の婚姻件数で割った「離婚・婚姻比」は38.3%になる。

2024年には、同居期間5年未満の離婚が相当数を占める一方、同居20年以上を経た離婚も少なくない。結婚直後だけでなく、長い婚姻生活を経た後にも破綻するリスクは残るということだ。
「結婚さえ成立すれば、その後も安定して続く」という前提は、こうした離婚件数の実態を見る限り、無条件には置けない。
そしてここからが本題だ。特に、夫が主たる稼得者で、妻が主たる監護者だった家庭では、離婚後の金銭負担と子どもとの別居リスクが男性側に同時に集中しやすい。
青森県では、婚姻100件に対して離婚53件
都道府県別に見ると、地域差はさらに際立つ。厚生労働省の令和6年(2024年)人口動態統計(確定数)をもとに【離婚件数÷婚姻件数】で算出した。
全国47都道府県 離婚・婚姻比一覧(2024年確定数)

全国平均は38.3%。1位の青森県は、年間の離婚件数が同年の婚姻件数の52.9%に達している。青森県の場合、2024年の婚姻件数3,313組に対して離婚件数は1,752組。婚姻件数そのものが全国的に少ない県のため、過去に成立した婚姻から生じる年間の離婚が、新しく生まれる結婚の数の半分を超える結果になっている。
一方、最も低いのは東京都で26.7%。離婚件数そのものは全国最多の20,424組だが、婚姻件数も76,441組と突出して多いため、比率としては全国最下位になる。「新しく生まれる結婚の数に対して、終わる結婚の数がどれだけ多いか」を示すこの指標では、婚姻市場が縮小している地方ほど数字が跳ね上がりやすい構造がある。
低賃金や生活費の負担が離婚・婚姻比を押し上げているという単純な因果は、出典をもって示せない。むしろ重要なのは、この比率は離婚件数だけでなく、その地域の婚姻件数が減少することでも上昇するという点だ。したがって、地域ごとの夫婦関係の壊れやすさだけを示す数字ではなく、人口減少や婚姻市場の縮小も反映している。それでも「結婚相談所の成婚率」だけを見て安心するのではなく、こうした構造的な数字も知っておいて損はない。
現実①:未成年の子がいる離婚では、母親がすべての子の親権者となるケースが約85%
子どもがいる夫婦が離婚するとき、親権を持つのはどちらか。

2024年までの単独親権制度下では、未成年の子がいる離婚の多くで母親が親権者となってきた。厚生労働省の調査では、未成年の子がいる離婚のうち、母親がすべての子の親権者となったケースは約85%を占め、父親がすべての子の親権者となったケースは1割程度にとどまる。これは2024年までの単独親権制度下での実績であり、2026年4月に施行された共同親権制度下の結果を示すものではない。ただし、共同親権になることと、子どもと同居して日常的に監護できることは別の問題である。
親権者や監護者の判断では、それまで誰が中心となって子どもの日常的な世話を担ってきたかという「監護の継続性」が重視される傾向がある。家庭内で母親が主たる監護者だった場合、その実績が結果的に母親側へ有利に働きやすい構造になっている。
従前の主たる監護者が母親だった家庭では、父親が離婚後も子どもとの日常生活を維持するハードルは高い。この数字は、父親の愛情が弱いことを意味しない。家族を養うために仕事を中心に担ってきた父親ほど、日常的な監護実績では不利になり、離婚後に子どもとの生活を維持しにくくなる構造がある。
2026年4月からは改正民法により離婚後の「共同親権」制度が施行された。父母は協議や調停によって、共同親権か単独親権かを決めることができる。合意できない場合には、裁判所が父母と子の関係などを考慮して判断する。ただし、共同親権になったからといって、父親と子どもが過ごす時間が自動的に増えるわけではない。親権者であることと、子どもと同居して日常的に監護することは別の問題であり、制度が変わっても父親が子どもとの日常生活を当然に取り戻せるわけではない。
現実②:親子交流の取り決めがあっても、会えるとは限らない
親子交流は、離婚後も子どもが別居親との関係を維持するための制度であり、子の利益を最優先に定められる。しかし、取り決めがあっても、実際の実施には同居親の協力が必要となる場面が多い。
父母間の対立や、子どもの意向をめぐる認識の相違などから実施が途絶え、再開まで調停等を要することもある。親子交流について、執行官が子どもを強制的に連れ出して交流させるような直接強制は認められていない。
親子交流は子の利益のための制度であるはずが、実務上は同居親(多くの場合は母親)の協力姿勢に大きく左右される――これが、離婚後に子どもとの関係を維持しようとする父親たちが直面する現実だ。
現実③:財産分与・婚姻費用・養育費、そして強制徴収という「出口のない支払い」
離婚には当然、お金の問題がついてまわる。財産分与、婚姻費用、養育費——それぞれの制度と、近年強化されている「強制徴収」の仕組みを見ていく。
財産分与:特有財産も「証明できなければ守れない」

婚姻中に夫婦の協力によって形成した共有財産は、原則として2分の1を基準に清算される。夫の収入が妻を大きく上回っていても、稼いだ名義が夫であることだけでは、夫の財産として守られない。夫婦の一方が特別な資格・能力によって突出した高収入を得ている場合など、例外的に6:4や7:3に修正される判例もあるが、それはあくまで例外だ。
一方、結婚前から保有していた預貯金や有価証券、婚姻中に相続・贈与によって個人で取得した財産は「特有財産」とされ、原則として財産分与の対象外になる。
ただし、ここで安心するのは早い。民法762条2項では、夫婦のどちらに属するか明らかでない財産は共有財産と推定される。つまり、「これは結婚前から持っていた自分の財産だ」と主張するだけでは足りず、争いになれば、特有財産であると主張する側が、通帳・取引履歴・残高証明・相続関係書類などによって取得時期や資金の出所を立証しなければならない。
しかも、婚前から使っていた口座に婚姻後の給与を振り込み、生活費や住宅費を出し入れしていた場合、婚前財産と共有財産の区別は急速に難しくなる。結婚時に1,000万円を持っていたとしても、その後何年もの間、同じ口座で給与と生活費を管理していれば、離婚時に残っている1,000万円が婚前財産そのものなのか、婚姻中の収入によって形成された財産なのかを証明する必要が生じる。元の財産が生活費などに使われ、現在の残高との連続性を追跡できなければ、特有財産として全額が除外されない可能性もある。住宅の頭金に婚前資金を投入した場合も同様で、頭金の出所を証明できても、婚姻中に夫婦の収入でローンを返済していれば、住宅全体がそのまま個人財産として守られるわけではない。
つまり、特有財産は法律上は対象外でも、実務上は、取得原因や資金の流れを証明し、共有財産と区別できる範囲でなければ、特有財産として除外してもらうことが難しくなる。長い婚姻生活の中で資金が混ざるほど、独身時代に築いた資産であっても、離婚時に自分の財産として取り戻すハードルは上がっていく。
また、退職金については、支給の確実性や退職時期などを踏まえて財産分与の対象となるかが判断される。企業型確定拠出年金やiDeCoについても、婚姻期間中に形成された部分の評価が問題となることがあるが、制度上そのまま口座資産を半分移転できるわけではなく、個別に判断される。
婚姻費用:離婚が成立する前から、収入の多い側が払い続ける

「婚姻費用」とは、離婚が成立するまでの別居期間中、夫婦や子の生活を維持するための生活費のことだ。別居後も婚姻関係が続く限り、収入の多い側には相手や子どもの生活費を分担する義務がある。実務上は、婚姻費用を請求した時点や調停を申し立てた時点以降の支払いが問題となることが多い。
家庭裁判所が公表する「婚姻費用算定表」に基づき、夫婦双方の収入と子どもの人数・年齢から金額が決まる。基本的に収入の多い側が少ない側へ支払う仕組みであり、共働きでも収入差があれば発生する。
離婚交渉が長引けば長引くほど、この婚姻費用の支払いも長期化する。離婚手続が長期化するほど、収入の多い側の負担も積み上がっていく構造になっている。
養育費:取り決めをしても、長期間払い続ける

厚生労働省の調査では、母子世帯のうち養育費を「現在も受けている」と回答したのは約28%にとどまる。これは養育費の取り決めと履行が十分に機能していない現実を示している。一方で、支払い義務が定められた父親にとっては、子どもが一定年齢に達するまで長期間の負担が続くことになる。
さらに2026年4月施行の改正民法では、「法定養育費」制度が新設された。離婚時に養育費の取り決めがなくても、子を主に監護する親は、子ども1人につき月額2万円の法定養育費を請求できる。これは暫定的な金額であり、父母の協議や家庭裁判所の手続によって、実際の収入や事情に応じた金額を別途定めることができる。ただし「請求できる」ことと「自動的に口座から徴収される」ことは別であり、支払いを実現するには請求・履行の手続きが必要になる。
強制徴収:未払いに対する回収制度は強化されている
養育費・婚姻費用の未払いに対する強制執行(差し押さえ)の制度は、近年急速に強化されている。

- 2020年4月施行の改正民事執行法により「第三者からの情報取得手続」が新設された。転職して勤務先が分からなくなっても、市区町村や日本年金機構に照会することで勤務先を特定し、給与を差し押さえられるようになった。財産開示手続への不出頭や虚偽の陳述には刑事罰も科される。
- 給与差し押さえの上限が緩和されている。通常の金銭債権では給与(手取り)の4分の1が差押えの上限(手取りが44万円を超える場合は33万円を除いた額)となるのに対し、養育費や婚姻費用では手取りの2分の1まで差押えの対象となり得る(手取りが66万円を超える場合は33万円を除いた額)。裁判所の公式説明によれば、養育費等の債権者は一般の債権者より差押えの範囲が広く設定されている。
- 給与だけでなく、未払い額や執行費用の範囲で預貯金なども差押えの対象となり得る。
- 2026年4月施行の改正民法では、父母間の合意書などで定めた養育費について、先取特権に基づいて優先的に回収できる範囲が、子ども1人につき月額8万円を上限として認められる。あくまで、合意書などを根拠に先取特権を行使して差押えを申し立てる場合の対象範囲の上限であり、養育費自体の上限ではない。
かつては「相手が逃げれば養育費は回収できない」というケースも少なくなかったが、制度はこの数年で、養育費を「取り決めだけで終わらせず、実際に回収する」方向へ明確に強化されている。婚姻中に形成した共有財産を原則2分の1で清算し、離婚成立までは婚姻費用を負担し、離婚後も養育費を長期間支払う。さらに滞納すれば、給与の2分の1まで差押えの対象となり得る——これが、離婚に伴って多くの男性が直面する経済的な現実だ。
現実④:熟年離婚という時限爆弾
同居20年以上での離婚、いわゆる熟年離婚も少なくない。この場合、財産分与に加えて厚生年金の分割(年金分割制度)も絡んでくる。長年勤め上げてきた厚生年金の記録を分割されることで、老後の生活設計そのものが大きく狂うケースもある。若いころの離婚とは種類の違う、老後の生活基盤に直結するリスクだ。
それでも婚活サービスはこう言わない
婚活サービスのビジネスモデルは「成婚させること」がゴールであり、そこから先――結婚生活の継続や、万が一破綻した場合に何が起きるか――は基本的にサービスの範囲外だ。営利事業である以上、それは当然の話でもある。しかし利用者側からすれば、「結婚のリスク」の半分しか見せられていないという状態になっている。
- 「離婚率10%」という数字は、分母・分子・追跡期間が十分に公開されていないケースが多い
- 離婚後に何が起きるか(親権・面会交流・財産分与・養育費)は、そもそも婚活サービスの説明対象にすら含まれていない
- 結果として、男性は成婚までのメリットを強く提示される一方、主たる稼得者や別居親になった場合に負う制度上のリスクを、十分に知らないまま婚姻を決断する可能性がある
結婚相談所にとっての成功は、成婚退会である。だが男性にとっての成功は、結婚後も人生を壊さずに守れることだ。

まとめ:知った上で選ぶために
結婚そのものを否定したいわけではない。ただ、リスクを正しく知ったうえで意思決定をすることと、知らされないまま関係を進めることの間には、天と地ほどの差がある。
親権の帰属、面会交流の実効性、財産分与や養育費の負担構造――これらは個々の相手の人柄とは関係のない、日本の司法・行政制度そのものに組み込まれた構造的な傾向だ。だからこそ、婚活を始める前、あるいは結婚を決める前に、この現実を知っておくことには意味がある。
婚活サービスが売っているのは「出会いのきっかけ」であり、「結婚後の人生設計」ではない。その先は、自分自身で情報を持ち、備えるしかない。
参考資料
- 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)「人口動態調査 人口動態統計 確定数 婚姻上巻9-1/離婚上巻10-1」都道府県別婚姻件数・離婚件数(2024年)
- 最高裁判所「令和6年度司法統計年報 3 家事編」
- 厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」
- 民法762条(夫婦間における財産の帰属・共有推定)/法務省「財産分与」
- 民事執行法(2020年4月施行改正、第三者からの情報取得手続・財産開示手続)/民事執行法152条(給与差押えの範囲)
- 裁判所「養育費に基づく差押え」
- 民法766条の3、308条の2(2026年4月施行改正、法定養育費・先取特権)
- 法務省「父母の離婚後の子の養育に関するルール」(改正民法・共同親権制度)












